-恐怖夜話-
まあ、長時間歩いていると、人って無言になるのよね。
それにしても、ペアルックで登山かぁ。
羨ましい気はするけど、私には無理だなぁ。
そんな根性無いし。
自他共に認める運動音痴の私は、思わず苦笑いが出てしまう。
いよいよ、その二人を車が追い越すという時、私は妙な違和感を覚えた。
「あれ?」
何かが、腑に落ちない――。
「どうした? もうガマンの限界か?」
思わず声を上げた私に、武士がおどけた声で尋ねてくる。
「あ、大丈夫。何でもないの……」
なんだろう?
今、何かが心に引っかかった。