-恐怖夜話-
暗闇の中で、自販機の前だけが明るい。
その明るさが、余計に闇の深さを際だたせてしまう。
「恵子は、何にする? ミルクティー?」
自販機の前で武士に聞かれた私は、ハッと我に返った。
闇が怖いと思うなんて、どうかしている。
「あ、えっと、私は、いいや」
「え? 珍しいな」
こと飲み食いに関しては遠慮しないタチの私の態度に、武士が不思議そうな顔をする。
まさか、『お化けが怖いからトイレ行きたくなったら嫌だ――』
とは、さすがに言えず、私は引きつり笑いで誤魔化した。