-恐怖夜話-
「いいから、車に戻るぞ」
武士は耳元で低く囁くと、目を白黒させている私のことなどお構いなしに、肩を抱き寄せたまま車に足早に向かう。
強引も良いところだ。
武士のこんな態度は初めて。
結婚前も結婚後も、こんな強引な有無を言わせないような行動は、見たことがない。
何かが異常だ。
さっきのトイレの出来事も、この武士の行動も。
「た、武ちゃん? どうしたの!?」
嫌な予感に、声が震える。
でも、武士は何も答えない。
私はそのまま、訳が分からないまま武士にグイグイ肩を引かれて車に戻った。