恋*クル〜2nd〜


そんな約束。

武人は理性を失うことなく、律儀に守ってくれたんだ。

何も言わないあたしに、武人はもう一度「おやすみ」と言って、目を閉じた。



目を閉じた武人の顔をしばらく眺める。

二重の瞼を覆う長い睫。

キレイな鼻筋の先にある、薄い唇。

間近で武人の顔をじっくり見るのは、これが初めて。



――武人を、失いたくない。



そんなことを漠然と思う。


市橋くんとのことを完全に忘れきったわけじゃない。

ふと思い出したりすることもある。


そのたびにあたしは、あの日のことを、眠っている時に見た夢だったんだって自分に言い聞かせている。


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