もう一つの赤ずきん
「ガオッ♪」

笑顔で口を開けたあのオオカミさんが立っていた。

「どこにいたの?」

口を開いてそう聞こうとしたとき━━━

「どこにいたの?って言おうとしたろ?」

いたずらに笑って私を見る。

「絵本の中に戻ってたのー♪(笑)」

白い犬歯が、降る白い雪の間からチラチラ見える。

「━っは、冗談だよ。まじに取んな?(笑)」

「━━━ずっと探してた。」


私をこの退屈な世界から連れ出してくれる気がしてた。

私の存在をしっかりとしたものにしてくれるんじゃないか。って。

「赤ずきんが?オオカミを?━━逃げるどころか探すなんて(笑)」

「だって。でも、多分、初めて会ったときからずっと。━━好きになっちゃってたから。」



逃げることを忘れた赤ずきんなんて。

うつむいて、下に積もった雪を見つめた。




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