もう一つの赤ずきん

涙が伝う。


そして気づく。

私はこうして泣くことが出来る。

好きな人に思いを伝えることが出来る。

雪を冷たいと感じ、誰かを想って苦しくなることが出来る。



それがオオカミさん…あいつには出来ない。

私に出来ることは……こんなにもたくさんある。




退屈な世界が光って見えた。

叶わぬまま消えた初恋だけど、それでいいと思った。

次に恋をするときは、きっともっと、世界は輝いてるはずだから。




雪が止んで太陽が顔を出す。

乱反射する雪。


あいつの足跡にそっと手を触れて、世界を楽しむと誓った。



私のほんの数日だけの赤ずきん物語。


逃げることを一度もしなかった赤ずきん。




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