恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
第6章「もうひとりのセンパイ」
あゆみセンパイに噴水に突き落とされたとき、ケータイは溺死したから、今が何時なのかは分からない。

だけど約束の時間をとっくに過ぎてることくらいは分かる。

あたし、ホントは1時間も前に噴水の前に行ってたのに……。

待ち合わせ場所にあたしがいなくて、井川センパイは、どんなふう思うんだろ……?


少なくとも、いいふうには思わないよね。

むしろ嫌われて当然だよね。

……ってか、そもそも井川センパイは、あゆみセンパイと付き合ってんだし、あたしのことなんか好きなはずないよ。


あたし、バレー辞める。

それに、もう2度と井川センパイの前には顔を出さない。

あゆみセンパイが怖いのもあるけど、井川センパイにも悪くて会えない……。


本当なら、今日は井川センパイと一緒に映画を見に行くはずだった。

それなのに……、

それなのに、今あたしは名前も知らない謎のイケメンと一緒にいる。

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