恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~

ヴィーン…、ヴィーン…

…とスカートのポケットの中で、不意にケータイがバイブで振動して、あたしはフッとわれに返った。


メールは父からのもので「早く帰れ」という内容だった。

何げに、そのメールの着信時刻を見て、軽く青ざめるあたし。

「いっけない、もうこんな時間っ……」


あたしはまっしぐらで家路を急いだ―――



あたしが生まれて15年が経つ。

それまでに何度、夜空を見たことだろう?

だけど何度、空を仰ぎ見ても、東京の夜空に星は見えない。

だけど、こんな星も見えない東京の夜空の下、天文学的な数字の確立で出逢ったのは、なにも彼と3匹のこねこだけじゃない。

クチは悪いけど“ねこ”にはやさしい謎のイケメンと、そして“ねこアレルギー”のあたしとの間でもまた、天文学的な数字の確立でキセキの出逢いが起こっていたんだ。


だけど、そのことにあたしが気がつくのは、それからしばらく経ったあとのコト――――


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