Heaven
『ヒカル、誰だよ?』
こそっとヒカルに聞くと、ヒカルは思い出したことを全て教えてくれた。
『ほら、いたじゃん。瀬川さくら。俺達の親父と仲良かった、瀬川疾風っていう人の子供だよ。小さい頃近所に住んでて仲良かったじゃん。だけど小学生くらいに引っ越したさくらだよ』
ヒカルの説明で、忘れていた過去が蘇ってくる。そうだ、思い出した。
さくらの存在を。
俺の父さんとヒカルの父親と、さくらの父親は、同級生でとても仲が良かったらしい。
近所にみんな住んでいたせいか、俺達三人は毎日のように遊んでいた。
だけど、さくらは父親の仕事の都合で、遠くの県に引っ越したのだ。
もう何年も会わなかったせいか、全然覚えていなかった。
この過去と思い出したもうひとつの思い出。
それは、俺とヒカルはさくらを奪い合っていた。
この時初めて気がつく。初恋は美加ではなく、さくらだったということに。