お風呂の神様!
イチル、雪山温泉に行く
イチルはお風呂が大好きだ。
小さいころ、今は亡き母にお風呂に入れてもらった、ほんわり優しい記憶。
年の離れた双子の妹達とお湯につかり、髪や体を洗い、はしゃぐちびっこ達と戯れる、疲れるが楽しいお風呂の時間。
愛する妹達が年頃になり、兄と一緒にお風呂に入ってくれなくなった今でも、イチルはお風呂が大好きだ。
暖かくてほんわかして、幸せな気分になれるから。

◆1◆

冬休みを間近に控えた期末考査。
三時限目、数学のテスト。
問題を解き終わったイチルは、軽く伸びをして机に突っ伏した。
窓側の席。
お日様の光が、ぽかぽかとイチルを照らす。
テスト、3教科とも、何時もより良くできたと思う。
何時もギリギリアウトで時間が足りない数学も、今日は時間に余裕がある。

…ホッとしたら少し眠くなった。

ぼんやりした頭の中で、今日の予定を考える。
とりあえずお弁当を食べて、家に帰って、明日の英語と生物と音楽のテスト勉強をしよう。
それから夕飯を作ろう。
今日はとても機嫌がいいから、ちび子達が大好きなオムライスと、ベーコン入り野菜スープでも作るか。
シーザーサラダも作ってやろう。
嬉しそうにお匙を動かす妹達の顔が浮かんで、イチルは思わずニヤニヤした。
それで、お風呂を沸かして、飯食い終わったらのんびり入ろう。
今日はとても機嫌がいいから、雪山温泉の入浴剤にしようかな…。
ふんわり甘い匂いがする純白のお湯。
封を切ると、何時ものお風呂場が温泉に変わる。
お湯が、湯気が、香りがイチルを優しく包み込む

ああ、超楽しみ!
早く終わんないかなっ!この時間…


終わりを告げる鐘が、何時もより静かな校舎に響きわたる。
先生が其処まで、答案を集めますと言った途端、教室にざわめきが戻ってきた。
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