蜜愛
今、誰がどのようにあたし達の話を聞いていたとしても。

至ってシンプル。

幸せ。
こんなに彼に愛されていて幸せね。


――そう、思うのかしら。


あたしは。


この彼に改めて薬指にリングを通されても。

それはまるで、

道で拙い芸を見せてお金を恵んでもらったような

道化師。


このリングが

あたしの芸当に対する評価。


幸せとかなんとかじゃなくて。

ファンができて良かったぁ

明日からまたしばらく、ご飯にありつけるぞ!

みたいな。


『安堵感』が胸に広がるのみで。


ミジメだった。

指輪を見つめながら嬉しくて泣いたんだと

また彼は勘違いしてくれて。


やっぱりあたしは。

玉乗りピエロ。



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