蜜愛

“愛してる”なんて、いつ以来だろうな。

もう長く聞いていないし、言ってもいないわ。


私は黙って旦那の奉仕をしてるだけ。


そうとわかっていても。

それすら消えてしまう私達の間柄を恐れて

断れない。



愛という、使い古された陳腐な言葉で癒されたい。


慰められたい。


嘘でも、いい。


……いや、嘘ではなくて。

私じゃなくちゃ、ダメになってほしいのに。



――旦那は今日も、遅くなると朝。

そう言って出かけたのだから。



< 163 / 421 >

この作品をシェア

pagetop