蜜愛

『みかんちゃん。眠れないの?』


わたしはその声に驚き、だけど名前を呼ばれたことに少し安心して、声の方をみた。


隣のテントのおじさんだ。


『あのね、パパもママもいないの』


そうかぁ、と、心配そうに頷き、

だけど、その後に


『おじさんのとこも、おばさんが帰って来ないんだよ』

と、子供のわたしに話すおじさんは、

クラスのお友達が迷子になったときくらい心細い顔で

真面目な顔でそう言った。


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