蜜愛

『おかーさぁーん!』

息子の声がした。


はっと、我に帰る。


セイタが泣きながら、海に向かって走ってくる。


『ダメだ!いくんじゃない!!』

奥さんの束縛をあっさり振りほどいて。

息子に駆け寄り止めるセイタ。


――ああ、そうか。

やっぱり。

セイタは。

“セイタ”が。


『息子』だと気づいてくれていた……



意識が遠のいていく。


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