蜜愛
『母さん、あたし。あたしが遊びに来てたんだよ』

母さんは、びっくりしていた。

何も言葉も出ない感じで玄関に突っ立っているから、

『あがりなよ。兄さんいいよね』

と彼をみたら、曖昧に頷いて、私は母さんに背を向けて部屋の奥に隠れた。

ヒールを脱ぐ音。
ストッキングを直す音。
フローリングを歩く足音。

そして母さんの姿が見えた。

母さんは、部屋の中を見回してゆっくり座った。


『まさ…か……蜜柑が大輔くんのおうちに来てるなんて、ね……』

『うん、たまにね』

母さんは、テーブルの上に散らかったビールの缶を片付けるのも忘れて乱れたベッドを見つめていた。

『ふたりきりで……なにしてたの?』

『おはなし』

それならうちですればいいじゃない、とは言わなかった。

母さんは、見つけた。


ーーベッドの下に落ちて


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