蜜愛
『私、目が不自由で。なんとなく光は感じるんだけど…見ていた方角、おかしくないですか』

そう尋ねる彼女とやはり、視線はぶつからない。


『そっか。そうかぁ、いや、あの。わかりませんでした。き、今日とても天気がいいし、河原……あの、夕陽を見てるんだって普通に思いました、普通に!』

彼女は目が、見えない。

これは内気な僕を勇気づけた。

僕のさえない容姿もわからないし、緊張で冷や汗びっしょりのおでこも、見えていない。

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