√番外編作品集
「なーに、難しい顔してんの? 今日は良くなかった?」

「そんなことない。ちょっと、悩み事があって」



薄暗い部屋のカーテンの向こうに、日が昇っていた。

思い切りため息をすると、ベッドの中の早苗さんはタバコの火を消して薄く笑った。


「悩み事ねぇどうしたの? 康平」

「俺ってさ冷たい男だよねーなのに極端な欲しがりっていうか、我が侭だよね」

「何? 急に。他の彼女に言われたの?」

「違うよ。自分で気がついたんだけど。彼女に本気になれない。全部遊びで止まっちゃう理由。みんなスキで、もっとスキとかできないって言ってたじゃん? だけどさそうじゃなくて根本的に……」

「巡り合わせがないだけじゃない?」

「そーかなー 一定越えると、なんか、欲しい気持ちだけでいっぱいになる。与えたいと思わなくなる」

早苗さんのタバコの甘い香りが鼻をかすめる。 

「早苗さんはさ、俺と遊びじゃん?」

「そうだね」

「分かり切ってるとさ、すごく気が楽。逆にすごく愛情感じたりもしちゃう。俺っておかしい?」

「いつかちゃんと本当に欲しいって思う相手も出てくるよ。与えて、与え返してあげたいって人がさ。あんた今いくつだっけ、18? 17?」

「じゅうなな」

「なぁに、まだまだじゃん。その年は難しいこと考えないで、私みたいな綺麗なお姉さんと仲良くしてればいいのよ。」

早苗さんの赤い口紅がとても豊かに微笑みの形を作る。
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