狂者の正しい愛し方
―――
「俺も行こう。」
時は現代に戻り、私の足首を掴む佐薙さんは、真顔でそんなことを言った。
途端に、私はうろたえる。
……心の中で、うろたえる。
顔に笑みを貼り付けたまま、一瞬も私から目を離さない佐薙さんを見つめ返して、頭の中で嵐のように言い訳を考えた。
確かに私は外に出るつもりだ。
しかしそれは佐薙さんとデートするためなんかではない。
“佐薙さんがいない空間”に行きたかったからだ。
「でもね、佐薙さん、」
佐薙さんが嫌いなわけじゃない。
むしろ、好き。大好き。
佐薙さんが私を好きなように、私も佐薙さんが大好き。
でも、どうしても私には“佐薙さんと離れる時間”が必要だった。