狂者の正しい愛し方
「女の子は時々、一人になりたくなるものなんですよ。」
超がつくほどにこやかに微笑んで見せると、佐薙さんは渋り始めた。
手を離そうとしかけて、やっぱり離さず、かと思えばまた力を緩める。
急かすことはせず、佐薙さんが手を離してくれるのを待つ。
やがて佐薙さんは、名残惜しそうに手を離した。
無表情なのに、目に宿る光はどこか物悲しそうで。
「晴姫、いつ、帰って来るんだ……?」
そんな飼い主を待つ犬みたいな目しないでくださいよ…。
私は笑顔のまま、佐薙さんの前にしゃがみこんで、ぎゅうっと強く抱き締めた。
名残惜しいのは私も一緒。
でも、だからって外出を諦める気は毛頭ないけど。
「すぐですから、待っててくださいね。」
「すぐ?20秒くらいか?」
「それ“すぐ”じゃなくて“一瞬”ていうんですよ…?」