言えない恋



― 芽衣 ―






壮介のマンションからかなり歩いた




よく道も分からない



バッグをユラユラしながらのんびり歩いてると、携帯が鳴った




壮介…?



携帯の画面には歩美からの着信が記されていた



歩美か…




「はい?」



『もしもし?今なにしてんの?』



「ん…歩いてる」


『歩いてる?どこにいるの?』


「わかんない…どうしたの?」




下がりきった私のテンション


歩美はなぜか不安げな声だった




たったさっきの出来事を歩美はまだ知らない



今日壮介と会うことは言ってたけど、内容までは言ってなかった




『今日壮介くんと一緒なんでしょ?』



「………」


『芽衣?』




歩美がなんで電話を掛けてきたのか分かった



私が綾さんのことを引きずって、壮介と何かあるんじゃないかって心配してるんだ



歩美、言ってたもんね



"芽衣は何も考えなくていい。関係ないんだから、ほっとけばいいんだよ"




私の性格を知ってる歩美はこうなることを分かってて、私に言ったんだ




ごめんね



私、歩美から言われたこと無視しちゃった



きっと怒るだろうな…‥





『芽衣…、まさか壮介くんに話したの…?』



「…………」



言えないよ



このまま壮介とは別れる、なんて…




言えない…





「ごめん‥また賭ける」


『え?ちょっと‥』




一方的に電話を切り、バッグにしまった




きっと歩美は悟ったに違いない




またきちんと話すから



今だけは…




もう何も考えたくない…‥―






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