きみの視る幻想(ゆめ)
「まさか」


キツネの顔がさらに恐くなる。


「なおさら腹が立つな」


だろうな。

俺だってもっとマシな、もっと格好のいい台詞をはけたらと思う。

だけど、あいにく俺はスマートじゃないんだ。

正直に言うことしかできない。

俺はじりじりと後ろに下がった。

キツネも合わせて前に出てくる。

本当に苦笑してしまう。

なぁ、キツネ。

そんなに警戒しなくても、俺はお前が警戒しているようなことは

何一つできやしない。

間合いを取るためじゃなく、俺は逃げるためだけに

下がっているんだからな。

入ってきたほうとは逆の端まで来て、俺は唖然とした。
 
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