アルタイル*キミと見上げた空【完】
「修也さん!お久しぶりです」
「お久しぶりッス!!」
いろんな声が飛び交う中、修ちゃんは、銀色の杖を右手でつきながら、凛に案内されて、席に着いた。
「相変わらず、かっこいいですね~~コーチ」
凛がドリンクが入ったグラスを置きながら修ちゃんに言ってる。
トモはそれを見て、またか、みたいな顔してるし。
本当に、相変わらずだ。
「コーチ、なんとか言ってくださいよ。こいつ、未だに落ち着きがなくて」
なんて、修ちゃんにこっそり愚痴ってるトモは高校卒業してすぐに実業団のバスケチームにスカウトされて、今もそこで活躍中だ。
凛は短大に進学後、今はイベント会社で働いてる。
2人でいると、全く高校時代から変わらないけど、実はもうすでに、来年の結婚が決まってたりする。
私はと言うと・・・・
ケガが元で、一年留年した修ちゃんと同じ大学に進んだ私は、やっぱりバスケ部のマネージャーを続けて、そして来年卒業を迎える・・・。
「ほら、汐。今日はあんたの内定祝賀会でもあるんだからね」
「え・・・・そんなの・・・いいよ」
「いい、ってことないですよね?修也さん?」
「いいじゃん。お祝いしてもらえば」
うん。まぁ・・・・。
この就職が厳しい時期に、すんなり決まったのには、本当は裏があって。
その会社はCMとか製作する広告会社なんだけど・・・
修ちゃんのお家が経営する傘下会社なんだよね。
つまりは・・・・大きなコネ。
しかも・・・その会社が持ってるバスケチームの監督に来年修ちゃんが就任する予定になってることは、テレビなんかでもちょこちょこと報道されてた。
「いやぁ、それにしても、最年少であのチームの監督、ってすごいっすね」
トモがビールを喉に通しながら、修ちゃんを尊敬のまなざしで見つめる。
「雑誌でもコーチ取り上げられてましたからね」
他のテーブルから、話題を聞きつけて声がかかると、それを聞いて修ちゃんはちょっと渋い顔をしてから、ため息をついた。