ヴァンパイアに、死の花束を
クチュ……グチュ……。

先生の舌の上から、甘い血の雨が降ってくる。

はじめて知った『血の甘さ』。

その味は、わたしをとろけさせるほど濃密で、甘美で。

ゴクリ、と喉を鳴らし、先生の血を貪るように受け取る。

「……あっ……ああっ……」

先生の血が甘過ぎて、わたしは先生の唇も舌も、全てを受け入れた。

先生の舌から血が流れてこなくなっても、わたしはその甘い香りを求めた。

先生は一度唇を離すと、物憂げな瞳でわたしを見つめ、両手でわたしの顔を包み込み、さらに激しいキスをした。

先生のキスに、前のような『死の味』は感じなかった。

わたしはただ、先生の『哀しみ』を感じていた。

………なぜ、この人はこんなにも『哀しい』んだろう?

瞳から、髪の毛から、キスから、全てが先生の哀しみを背負っているように思えて。



………この時間が、ずっと続けばいいと、思った。





この時、穂高のことをちらりとも思い出さなかった自分に、




………わたしは罰を与えたかった――――――。
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