ヴァンパイアに、死の花束を
右肩に陣野先生の口づけを受け、沙耶は恍惚とした吐息を漏らす。

沙耶の頬を伝うしんと音のない涙。

…………沙耶………!!!

沙耶は涙を流していたけど、その表情は綺麗な清廉とした笑顔だった。

………星のように汚れなく。

そのままゆっくりと紅く燃える別荘へと歩き始めた。

その時、雪音が小さな吐息を吐いて目を覚ました。

「…雪音…気がついたのね」

レイの腕の中で、雪音が何かの意識を感じとったかのように、沙耶を振り返った。

澄んだ瞳で、沙耶の後ろ姿を見つめる。

「沙耶お姉ちゃん…綺麗…流れ星…みたい…」

燃え盛る炎に向かって歩く凛とした背に、金色の髪が流れるように揺れる姿は、命そのものを燃やしながら落ちていく流れ星みたいに、輝いていた。

レイが意識の朦朧としている雪音を抱きしめながら、瞳を細めて沙耶を見る。

「そうだね、雪音ちゃん。愛する人に向かって流れる流れ星だ」




―――――――そして、流れ星は燃え盛る太陽の塵となった。





右肩が燃えるように熱を帯びる。



沙耶……ここに、あなたの命が宿った。



―――――あなたの、燃えるような恋が。





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