7年目の浮気
加藤が連れていってくれた店は入口がわかりづらく、知らなければそこに店があるとはわからないような店だった。

木製の重たそうな扉は案外軽く開き、加藤は店員と親しげに話した。


「加藤君、このお店の常連なの?」

「うん、友達の店なんだ。昨日のもそうなんだけど。」

「えっ、昨日のも?」


加藤が奥の席を促した。


「あっ、わたしは手前でいいの。」


奥はやわらかそうなソファー席だったが、芳雄とどこかで食事をするときは決まってそういう席には芳雄が座っていたのでそちら側は慣れておらず、勧められたことにも些か戸惑いを覚えた。

加藤は茉莉花が手前に座ったので、奥へ座った。

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