エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「俺な…ここには(フリースクール)自分の意志で来たんじゃないんだ…。」

どうやら命の抱えるものも大変そうな気配だ。

火菜もしっかり受けとめる覚悟をした。


「俺の親父は沖縄の小さな島の出身で、子供の頃から賢くて“神童”と呼ばれていたらしい。 医者を目指して上京した親父を島の人はいずれは、ほぼ無医村に近い島の駐在になってくれると期待したが、親父自身にはそんな考えは微塵もなく、すぐに都会の大病院の歯車になった。
そして地方だが開業医の娘の母と結婚したので中級だが地域密着型の病院の柱になった。

子供は3人。全部、男だ。俺は3番めで、一番上はインターンで、二番めは医学生。そして俺だけなぜか何の期待もされる事なく自由に育てられた。

いや、自由というより何だろう…お前には医者は向いてないからと幼い頃からまったく何のレールも引かれなかった。

俺はそれがさみしくて、末っ子の特性を生かして、みんなの前でバカばっかりやって道化を演じた。

すると、みんなは喜んでくれる。

『お前は気楽でいいよな〜!』とか『ほらアレをやってくれよ!』とみんなを笑わかす事で家の空気を和ませる存在になって必死に居場所を作っていた。

親はとにかく忙しい人で、俺は勉強する必要がなかったから夏休みになると、沖縄の祖父母の家で過ごすのが唯一の楽しみだった。

普段、味わえない自然との交流がそこにはあって、ささくれた心が開放される様だった。


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