エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「私が勲で……息子は勇です。私たちはもう大丈夫ですから下ろして下さい。」

そう言ってサムは立ち上がろうとしたが、西田がそれを静して止まらせると

「まあ座って。坂田さん。二人とも濁流を流されて気が動転しているよ。病院で診てもらってから、聞いてもいいんじゃないか?」

と助け船を出した。

「そうですね。西田さんがそう言うならそうします。」

坂田があっさり引き下がったので、サムが西田に小さく礼を言った。

「すいません。」

「いや、いいんだ。それより二人とも怪我はなくても水をたくさん飲んでるハズだ。念のために検査は受けといた方がいい。」

西田はそう言うと、ハッ!と思い出したように白いケータイを取り出した。

それを目ざとく勇がみつけた。

「あっ!ぼくのケータイだ。」

「おや、これは息子さんのですか?」

サムはコクンと頷いた。

勇は西田からそれを受け取ると

「わ〜い。よかった。なくしたと思ってたのに よかった。よかった。」

無邪気に喜ぶ勇を見て、今度こそサムも腹を決めた。

「勇、濡れたけど多分使えるよ。貸してごらん。」

勇は言われるままにサムにケータイを渡した。

そしてサムが電源のボタンを押すと勇のケータイは再び息を吹き返した。

「わーい!ぼくのケータイが 明るくなった。」


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