エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「良かったわ。来てくれて。」

望がタオルで髪を拭きながら言った。

「私はどんな事があってもと思っていましたが、しかし、台風の最中に外に出るなんて、初めての経験です。」

梓は持ってきた着替えを袋から出しながら言った。

「私だって、そうよ。でも火事場の馬鹿力って言うじゃない!アナタと弥生さんをどうしても合わせたくて必死に歩いて来たの。」

「あぁ!じゃあ私、彼女と会えるんですね。谷川さん、本当にありがとうございます。」

梓は少しだけ肩の荷が下りた気がした。

「いいのよ。アナタにはこちらこそお礼を言わなきゃ。そしてね……弥生さんの知り合いもアナタに会いたいそうよ!詳しくは聞いてないけど、今、一緒に来てるハズだからもうすぐ会えると思うわ。男性の方らしいけどね。」

「男性…ですか!?」

梓の頭を掠めたのはなぜか、あの憎い男の顔だった。

「……まさかね。」
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