ことばのスケッチ
「彼女の何処に魅力があるんだ」
「彼女は美人だよ」
「いい年して、女の見方も知らないな」と、私は無礼講の範囲のぎりぎりの線を突く。
「女の見方とやらを先輩に教わりたいですね」と、いくらか胸に応えたらしい。
「女性の美しさはなんと言っても笑顔だよ」
「うん、そうかも知れない」
「彼女と結婚したら、お前の家には遊びに行けないな」
「どうして?」
「玄関にも入れてもらえないと思うよ」
「だって、俺の親友だよ!」
「俺は彼女の知人でもなければ、ましてや親友でもない」
「俺が何とかするよ」
「俺ですら、彼女の心を開くことができないんだから、お前には無理だね」
「相変わらず、手厳しいね」
過ぎ去った過去の話をしているうちに、酒も少なくなり食べるものも少なくなる。何処かで二人の様子を見ているのか、早くもなく、また、遅くもないタイミングで次の懐石料理がテーブルの上に運ばれる。客に対する細やかな神経が感じられる。
「まあ、仲がよろしいんですね」と、例の女性がそれとなく現れた。これも、客に対する心遣いであろう。さりげない仕草は、客との間の距離を感じさせない。
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