ことばのスケッチ
また、彼女が書棚に本を取りにきて、書棚の引き戸が開かないと言って、一生懸命に開けようとしていた。私は、その彼女を暫く楽しんでから、「由美さん、この書棚、真中にし切りがあるよ」と言った。礼儀の世界では、「知っていれば最初に言ってくれればいいじゃないですか」とも言えるし、わざと意地悪しているとして、にらみつけることもできる。そこには、心の駆引きはないが、由美さんは「あらほんとだ」と言って、自分の間抜けさにげらげらと笑って自分を曝け出し、無礼講の世界を作り出す。彼女の心に深さが広がり、その笑いには愛くるしいものを感じさせる。
由美さんのこうした性格は、持って生まれた天性だとすれば、礼儀の世界に生きる人でも、自分の好きな人にのみ無礼講の世界を作れるのは何故だろう。由美さんは、八方美人だとすれば、体から滲み出る愛くるしさは一体なんであろう。幼い頃に育った家庭環境だとすれば、同じ親に育てられた兄弟は皆同じ筈であるが、そこに差異が出るのは何故であろう。大小はあれど、人それぞれの心のバランスのなせる業である。
由美さんのこうした性格は、持って生まれた天性だとすれば、礼儀の世界に生きる人でも、自分の好きな人にのみ無礼講の世界を作れるのは何故だろう。由美さんは、八方美人だとすれば、体から滲み出る愛くるしさは一体なんであろう。幼い頃に育った家庭環境だとすれば、同じ親に育てられた兄弟は皆同じ筈であるが、そこに差異が出るのは何故であろう。大小はあれど、人それぞれの心のバランスのなせる業である。