ことばのスケッチ
(8)
さてさて、私も後一ヶ月で満一歳になる。私よりも二歳上の兄がテーブルについている。兄はテーブルに固定されることなく、自由の身である。兄もオギャーと生まれて、私が生まれるまでは私と同じ経路を経てきた。これまで独り占めしてきた世界であったが、私が現れてからそうはいかなくなった。これが、兄の一番の不満とするところであり、その不満が時々行動として現れる。私と兄の間に親が介入してきて、奇妙なバランスの世界を構築する。兄の名は「元道」、ユキミチと言うんだけど、この名前の元には、君主と言う意味があり、人間として初めに守るべき筋道あり、と言う哲学的な意味が込められている。
「ユキ!テレビの方を見ないで、早く食べて!」
「ママ、食べさせてよ!」
「ユキはお兄ちゃんだから、ほら!カイチに負けるわよ!」
《カイチのやろうめ、ママを独り占めしやがって、俺の方が早くからママと付き合っているんだぜ!》
「ユキ!」と、ママの声が一段と高くなる。
《ふん!カイチのやろうめ!食べてやるものか!》
「ユキ!早く食べないと片付けるわよ!」
《片付けるなら片付けてみろ!食べてやらないから!》
「しようがないわね!今度だけだよ!」
久しぶりにママの肌を感じたユキは思わずにやりとした。
そこえ丁度、婆と爺が「ユキ公園に行こう」とやってきた。婆の家までは歩いて五分、公園までは十分である。
さてさて、私も後一ヶ月で満一歳になる。私よりも二歳上の兄がテーブルについている。兄はテーブルに固定されることなく、自由の身である。兄もオギャーと生まれて、私が生まれるまでは私と同じ経路を経てきた。これまで独り占めしてきた世界であったが、私が現れてからそうはいかなくなった。これが、兄の一番の不満とするところであり、その不満が時々行動として現れる。私と兄の間に親が介入してきて、奇妙なバランスの世界を構築する。兄の名は「元道」、ユキミチと言うんだけど、この名前の元には、君主と言う意味があり、人間として初めに守るべき筋道あり、と言う哲学的な意味が込められている。
「ユキ!テレビの方を見ないで、早く食べて!」
「ママ、食べさせてよ!」
「ユキはお兄ちゃんだから、ほら!カイチに負けるわよ!」
《カイチのやろうめ、ママを独り占めしやがって、俺の方が早くからママと付き合っているんだぜ!》
「ユキ!」と、ママの声が一段と高くなる。
《ふん!カイチのやろうめ!食べてやるものか!》
「ユキ!早く食べないと片付けるわよ!」
《片付けるなら片付けてみろ!食べてやらないから!》
「しようがないわね!今度だけだよ!」
久しぶりにママの肌を感じたユキは思わずにやりとした。
そこえ丁度、婆と爺が「ユキ公園に行こう」とやってきた。婆の家までは歩いて五分、公園までは十分である。