ことばのスケッチ
食べ物も私にとっては未確認物体である。この点、世の人は勘違いしがちである。そして、確認の手段である味覚と臭覚以外に歯ざわりが加わることも忘れないで欲しい。食べ物を口から出すのは、純粋な心から発する『ことば』なのである。ざらざらするから口から出す、冷たいから口から出す、熱いから口から出すのは、決して気ままからではない。以前飲んでいたものと違うなと確認したからである。したがって「この子はなんと気ままな子なんだろう」と思うのは、私と会話をしていない証拠である。また、私と会話をしないと、将来において好き嫌いという結果をもたらすのである。結果が出てからではもう遅い。動物的感覚って奴は治りが遅い。未だに、なめこ汁が嫌いな奴もちらほらいるし、最も端的には、海外旅行をして、外国料理が口に合わないといっている奴がいるではないか。

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