ことばのスケッチ
ユキはその奴の前にかが見込み、プラスチックの容器をぐいっととらまえた。幸いにして、管理人の介入はなかった。何の抵抗もなく、その容器を確保する。奪ったのではない。ただ、弱い奴から自分の欲しい物を確保しただけである。二三度砂を掬ってはその砂を積み上げながら、ひょいっと横を見たら、五六歳の男の子が、バケツに水を汲んできて、その中に砂を入れてこねまわし、砂の団子を作っている。ぽいっとプラスチックの容器を投げ捨てて、その前にかがみこむ。弱い奴はユキが投げ捨てたプラスチックの容器を素早く手にする。ユキもバケツの中に手を入れようとした途端に、無言のままその手をはね退けられた。暫くその団子作りを観察していたユキは、散らばっている別の容器を持って水を汲み、奴の前に無言のまま差し出す。
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