ことばのスケッチ
第二話 純粋さと非純粋さ
私と早苗は、時々母の様子を見るために実家を尋ねることがある。ピンポンとインタホンを押したが返事がない。玄関に灯りがついていて、人の気配がする。もう一度インタホンを押してみる。だが返事がない。ドアを押してみたら開いたので中に入った。「こんばんは」と言ったら、明かりが漏れている部屋から「うん」と返事があった。「お邪魔します」と言って二階に上がる。
 二階には、九十歳になる早苗の母が住んでおり、下にはここの家主である嫁が住んでいる。家主の一番の不満とするところは、いわゆる世間で言う嫁と姑の仲である。この不満が原因して、いたるところに撒き散らかされる。周りの者はそう考えているのである。
「大勢兄弟がいるのに、どうして私だけが親を見なければならないの。それに、この人は私の実の親ではなく、あなた達の親じゃないですか」と言うのが、不満の種である。

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