ことばのスケッチ
なるほど、道理に叶っている。親の面倒を見る義務も無ければ、確かに実の親でもない。ただ、九十歳の母からしてみれば、昔からの習わしで、長男が自分の親をみるのが義務であると思っているに過ぎない。
しいて言えば、母の面倒をみる条件と引き換えに、母の土地に家を新築し、主人の名義になっていることである。周りの者は、これで義務が生じていると考えている。
一応これも道理に叶って、経済的にはバランスが取れているようであるが、双方にそれぞれ言い分があってそうはいかない。糸のもつれはここから始まる。
家主の部屋のボタンを押すと、二階の母の部屋のブザーが鳴る仕組みになっていた。ブーと鳴ったので、「食事に行ってきます」と言って、よっこらしょと腰をあげる。腰がほぼ九十度に曲っていて、爪先が着物の裾に隠れて見えない。
「着物の裾を踏んだら転ぶよ」と早苗が言い、
「大丈夫だよぉ」と母が応える。
「階段に気をつけて!」
「大丈夫だよぉ、馴れているから」と言って、下に降りていった。暫くしてトコトコと階段を上がってきた。
「どう、美味しかった?」
「ご飯と味噌汁だけ食べてきた」
しいて言えば、母の面倒をみる条件と引き換えに、母の土地に家を新築し、主人の名義になっていることである。周りの者は、これで義務が生じていると考えている。
一応これも道理に叶って、経済的にはバランスが取れているようであるが、双方にそれぞれ言い分があってそうはいかない。糸のもつれはここから始まる。
家主の部屋のボタンを押すと、二階の母の部屋のブザーが鳴る仕組みになっていた。ブーと鳴ったので、「食事に行ってきます」と言って、よっこらしょと腰をあげる。腰がほぼ九十度に曲っていて、爪先が着物の裾に隠れて見えない。
「着物の裾を踏んだら転ぶよ」と早苗が言い、
「大丈夫だよぉ」と母が応える。
「階段に気をつけて!」
「大丈夫だよぉ、馴れているから」と言って、下に降りていった。暫くしてトコトコと階段を上がってきた。
「どう、美味しかった?」
「ご飯と味噌汁だけ食べてきた」