ことばのスケッチ
自分だけが知っていて、相手が知らない官庁の話は言葉の流れも良く、すらすらと出る。官庁内の話がなおも続く。
「それはそれは、心強いですね」と言って、十数人が取り囲む円卓の上に客先の企画担当者が書類を配り、その話をそれとなく打ち切った。
「それでは」と、客先の企画担当者から新製品開発の趣旨の説明があり、引き続き客先の技術担当者から技術的な説明をする。この新製品を如何にして特許面から保護をし、会社の実績に結びつけるかが、この会議の主題であり、会社の運命がかかっている重大な会議でもある。
 民間に下って、初めて接する議題であり、新生品の開発と会社の運命との関係は、書物ではお目にかかったことはあるが、実際のものとして目の当たりにするのは初めてである。蓑を脱げば、身も軽くなるのであるが、蓑を着て反り返った身体は治らない。超ベテランの担当者の前を遮るようにして、
「一応ご趣旨はわかりました」と言ったものの、何処から手をつけてよいのか、トンと検討が付かない。間を置いて話すのも話術の一つではあるが、ちと間が空きすぎる。円卓の視線は、超ベテランの担当者のほうに自然に流れる。それではと、超ベテランの担当者が立ち上がり、黒板に向かって新生品の技術を特許面から分析する。やっと、頭と尻尾が見えてきたようだ。また、ひとしきり太いパイプの話が始まった。
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