ことばのスケッチ
「さすが先生様ですね」
「いやいや、おだてんでくれ」
「はい、先生様、解りました」
「君達も楽になっていいだろう」
「はい、先生様のお蔭です」
担当者の仕事の量が減ってきたが、メモ用紙に印鑑を押すのに、先生様は相変わらず忙しい。
「先生様、今日は何をやればよろしいでしょうね」
「私は忙しい身なんだ、何か仕事はあるだろう君」
「ハイ先生様、ワープロの拭き掃除でもやりましょうかね」
提灯の灯りからそれた先生様の足取りは、永年官庁とやらに染まっていて、今自分はどちらの方向に向かっているのかも判らない。「私は非常に忙しいので、人を増やして欲しい」と、人事部長に依頼した。
毎月の売上が見る見る減少し、先生様の成果が現れる。さすがの経営者もこれには困り果てて、ついに首にすることにした。「責任をとってやめます」と言う挨拶には、未だに誇りと肩書きを感じさせる。誇りも肩書きも通用しない世間に放り出された先生様の姿は、蝉の抜け殻のように、中身も生気も空っぽになる。先生様の周りには人影は見当たらず、誇りと肩書きを背負って、身を反らせながらどちらの方向へ行ったのやら、その後の消息がプツリと切れた。
「いやいや、おだてんでくれ」
「はい、先生様、解りました」
「君達も楽になっていいだろう」
「はい、先生様のお蔭です」
担当者の仕事の量が減ってきたが、メモ用紙に印鑑を押すのに、先生様は相変わらず忙しい。
「先生様、今日は何をやればよろしいでしょうね」
「私は忙しい身なんだ、何か仕事はあるだろう君」
「ハイ先生様、ワープロの拭き掃除でもやりましょうかね」
提灯の灯りからそれた先生様の足取りは、永年官庁とやらに染まっていて、今自分はどちらの方向に向かっているのかも判らない。「私は非常に忙しいので、人を増やして欲しい」と、人事部長に依頼した。
毎月の売上が見る見る減少し、先生様の成果が現れる。さすがの経営者もこれには困り果てて、ついに首にすることにした。「責任をとってやめます」と言う挨拶には、未だに誇りと肩書きを感じさせる。誇りも肩書きも通用しない世間に放り出された先生様の姿は、蝉の抜け殻のように、中身も生気も空っぽになる。先生様の周りには人影は見当たらず、誇りと肩書きを背負って、身を反らせながらどちらの方向へ行ったのやら、その後の消息がプツリと切れた。