苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「ねぇ、私が声掛けたからどっかに行っちゃったのかな……」

都さんの瞳が、潤んでいる。

「心配しなくて大丈夫ですよ。
 自分でなんとかするはずです」

「ダメよっ。
 怪我してるんだから。
 ねぇ、お兄ちゃん。白瀬さん助けに行こう?」

「大丈夫ですから、ね?
 着替えて……」

都さんは、ぷぅと頬を膨らませる。

「もういいもんっ。
 お兄ちゃんなんてダイッキライっ」

捨て台詞を吐いて、くるりと踵を返す。
ケータイ電話を取り出す彼女の手首を、俺は慌てて掴んだ。

都さんはきぃっと俺を睨みつける。

「もしもし、パパ?
 ねぇ、白瀬さんが怪我してるの。
 助けてあげて?
 え、白瀬さん、ここにはいないわ。
 だって、学校の帰りに見かけたんだもん。
 私は今、お屋敷よ?
 お兄ちゃんに頼んだのに、助けてくれないんだからっ」

一気にまくしたてている都さんは、年相応の子供にしか見えなくて、俺は思わず頬を緩ませる。

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