苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「……パパがお兄ちゃんに代わってて」

都さんは膨れたまま、俺に電話を渡した。
電話の向こうの紫馬さんの声は、笑っている。

そうして、紫馬さん独特ののんびりとした口調で言った。

「大雅くん、どうして、都ちゃんがこんなに怒ってるわけ?
 白瀬のこと好きなのかなぁ」

「違うでしょう」

「頭に血がのぼった若造が、命に別状のない怪我してるなんてよくあることなのにね」

「そう思って、助けようとしなかったら都さん怒っちゃいました」

目を向けると、まだ、頬を膨らませて俺を睨んでいる。
仕方なく、その頭をそっとなでてみるのだけれど、気持ちはおさまらないみたい。

「どうして、こんなに誰にでも優しい子に育っちゃったのかな。
 俺に似たのかな――」

ほとんど誰にも興味の無い紫馬さんの言葉には、全く持って説得力は無い。

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