苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
ふぅ、と。
キョウは三人の視線を浴びながら、これみよがしのため息をついて、黒い髪をさらりとかきあげる。

その仕草は、うっとりとしたため息を誘うもののようで。

ほうというため息が、あたりの空気に溶けていく。


「ユリアは本当、最強だね」

当の本人は、やれやれ、と。
苦笑を溶かしたような声で囁いている。

「そんなわけないでしょーっ」

最弱よ、最弱。
ついでに言えば、世界で一番不幸な少女だわ、きっと。

「ま、この貸しは今夜ベッドの中で返してもらうから、忘れないでね」


……ハイ?
  私、何か借りてましたっけ?



魔王様は、本来の調子を取り戻したような自信に満ちた声で言うと返事も聞かずに指を鳴らす。

(次ページへ)
< 11 / 196 >

この作品をシェア

pagetop