苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「珈琲でも……」

「これっ」

清水の言葉を遮るのは、都さんの声。

「……え?」

「お兄ちゃんもこれ飲むのっ。
 ねぇ?」

俺はゆっくりと足を進めて、無邪気に俺を見上げる都さんの髪を撫でた。
カップの中は、もう、空っぽ。

「そうですね。
 同じものを」

「……甘すぎると思いますけど……」

「いいよ、清水。
 全く同じものを。量は半分で」

去年のクリスマス。
彼女の誕生日に、添い寝をやめてからずっと、彼女のご機嫌は斜めのままだ。
それでも、時にはそんなことを忘れたかのように普通に俺に話しかけてくれる。

……もっとも。
  今は確実に子供らしい『下心』があるからなのだが。

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