苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

・旅行

柔らかい光を感じて、安倍龍星はゆっくり瞳を開ける。
が、隣で寝ていたはずの愛しい姫の姿が無くて、慌てて身体を起こした。

吉野で桜が見たいという毬にせがまれて、ここまで馬を走らせたその疲れが出たのだろう。

それにしても、不覚だ。

と、龍星はてきぱきと服を着替える。

外は、京の都よりは少し寒かったが、それでも柔らかい春の暖かさに満ちていた。

龍星はゆっくり瞳を閉じて、周りのモノたちに声を掛ける。

常人には見えぬ「モノ」たちは、快く姫の居場所を教えてくれた。

龍星は彼女の無事を知り、ほっとしながらも、足早にそこへと向かう。

一際桜が綺麗に咲き誇る場所に、毬は居た。
そして、まるでそこが自分の部屋でもあるかのように、横たわって桜の花びら越しに空を眺めていた。

「……毬?」

声を掛けながらそっと近づく。

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