私のウソ、彼のキモチ
次々と疑問が生まれる中、彼はそんな私を見てこう言った。


「そういえば俺、まだメイの笑った顔見てないかも。」


図星を言われ思わず動揺してしまう。
きっと彼も変に思っているに違いない。
だって彼が惚れている子は笑顔がとても可愛い子なんでしょう?
そんなの私じゃない。


「そうかな。笑ってるよ、ほら!」


自分でもわからない。
わからないけど無理に笑って見せた。
ちゃんと笑えてる?そんなのは関係ない。
この場をごまかせれば、それで良いんだ。


「良かった。俺といて楽しくないのかと思った。」


彼はそう言うとプイッと顔を背けた。
その行動が冷たい目と彼の口調に似合わず思わず私まで照れてしまった。

こんな彼でも照れることってあるんだ。
なんだか可愛いかも。


「なんか、ごめん。」


ふと口から出たのは彼の気持ちへの謝罪の言葉。
彼が照れたのはきっと私が“あの子”だと思っているからだ。
人違いだと知ったら彼はきっと照れたりなんかしない。
“あの子”と思っているから彼は照れてるんだ。


「なんで謝んの?別に良いのに。あ、つか家行っても良いだろ?」


さっきまでの照れた様子は風の中、彼はまた人を見下したように聞いてきた。
やっぱりこういう所は本当にムカつく。
コイツ何様のつもり・・・?


「ダメ。家はダメ。せめて人が多い所が良い。」


この男、いきなり電車の中で腕を掴んできた挙句に俺様告白。
・・・相当のヤリ手だと思う。
だからこんな男と部屋で2人きりなんて絶対危ないに決まってる。


「人が多い所?・・・わかった。」


そう納得した様に頷くと彼はさっきの様に無言で私の腕を掴み来た道を再び戻って歩いて行く。
彼は一体何がしたいのだろうか。
また学校へ戻る気なの?

私は彼の行動が全くと言って言い程わからなかった。
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