私のウソ、彼のキモチ

-私の疑問、彼の純情

「ほら、ここなら人も多いだろ。」


彼はまるで“やってやった”と言わんばかりの満足そうな表情を浮かべている。
彼は相当のヤリ手だと思ったが、それ以上に彼は相当の馬鹿なんじゃないかと私は思った。
だって、ここは-


「学校のグラウンド・・・。何考えてるの?」


私は目の前に広がるグラウンドに唖然と口を開かせた。
確かに部活中の生徒達がたくさんいて人が多い。
でも、学校のグラウンドだなんて。


「は?メイが人が多い所が良いって言っただろーが。文句あんのか。」


文句あんのか・・・って私はアンタに呆れてるの。
人が多い所なんて街中っていう意味だったのに、わざわざ学校のグラウンドで何をしろって言うのよ。


「ねぇ、グラウンドで何するの?私、帰って良い?」


そう私が溜息交じりで言ってみると彼は眉間にしわを寄せてジッと睨んできた。
その迫力に負けてしまった私は「な、何?」と思わず動揺してしまう。


「何するのって座って話しでもすれば良いじゃねーか。ほら、座れ。」


彼はグラウンドの端の方に足を進めコンクリートになっている地面の上に腰を下ろした。そして彼は手で地面をトントンとすると私が座れる様に地面に落ちていた石ころを遠くの方へ投げた。
口調はキツイ。しかも俺様。だけど何故だか優しい。


「わかったよ、座る。」


彼は私が座るのを見ると少しだけ口元を緩ませた。
その笑顔を見ると急に嬉しくなった。


「メイ、明日も一緒に帰るぞ。」

「うん、だけど変な事はしないでよ。」


彼と一緒に帰っても悪くないと思った。
彼は俺様で多少の自己中心的な部分があって私はたまにイラつくけど、彼の笑顔を見るのは私にとって凄く嬉しい事だと知ってしまったから。

でもその笑顔は私に向けていない。
彼は“私”だと思っているけど彼の惚れている子は別の人。
私のついたウソが彼にバレるまで罪悪感を感じながら彼の笑顔を見ていよう。
・・・なんてね。

私が彼にそこまでの執着心を持つ事なんてあり得ないんだから。
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