Love Short Story's

「莉絵、お隣のお兄さん引っ越しするそうよ。」

「え、嘘でしょ?何で・・・?」


お母さんが嘘をついてるだなんて、これっぽっちも思っていない。だけど、信じたくなかったのだ。


「就職先が決まったそうよ。県外に行っちゃうらしいわ。結構急な話で今日の夜には行くらしいわよ?」


その言葉を聞き思わず体が動き、私は走ってお隣に向かっていた。
会いたい。会ってお兄さんの笑顔が見たい。


「お兄さん!」


丁度お兄さんは単車を洗っている所だった。
滅多に洗っている所など見ないのに。
泡だらけの単車を磨いているお兄さんは、頬に泡をつけていた。


「お兄さん、引っ越しするの?」

「ああ。そうだよ。俺がいなくても元気でね。」


お兄さんはそう微笑むと水で濡れている手をタオルで拭き、ポンポンと私の頭を撫でてくれた。


「お兄さんも、元気でね。」


最後にお兄さんの笑顔を見れただけで、もう良くなっちゃった。
きっと明日の朝も明後日の朝もその次の朝だって、お兄さんの笑顔を思い出して元気にやっていける。


「じゃあ、お兄さん。またね。」

「うん。また・・・いつか、ね。」


end
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