チェンジ‐ため息の行方
 が、しかし小杉は別に人を殺そうなんてだいそれた事はさらさら考えてはいなかった。言うなれば単に貧乏な家に生まれた不憫な自分の子供と、おそらくこれから先何不自由なく裕福に暮らすであろう金持ちの子供とをただチェンジするだけなのだからと。そう小杉は自分を短絡的に正当化させてもいた。

 だがこの時小杉はその行為が後々明らかに二人の子供の運命を大幅に変える事であり、はたまた子供の心を苦しませる事になるなどとは爪の先ほども考えてはいなかったのだ。

 要するにこの小杉の安易な思い込みとこれから訪れるであろう悲劇の全てはここにあったと言えるのかも知れない……。

 そして同時にそれはある意味感情に任せた小杉の無謀な計画であり、しかもそれは下手をするとギリギリの犯罪行為になる。そしてもしも運悪くバレれば捕まり、運良く成功すれば我娘の将来は安泰である?
< 13 / 26 >

この作品をシェア

pagetop