リナリア
でも、図書館に来たのは間違いだった。
来なければ、良かった。
あたしが図書館を好きな理由は、誰にも邪魔されずに本を読める事。
人目を気にせず、考え事が出来る事。
しかも、本当に人目に触れずに誰にも邪魔されない穴場スポットがこの図書館にはあって、それもここを好きな理由の1つだ。
なぜかふかふかのソファとテーブルが設置されていているそのばしょは、不思議なほど人が来ない。
まさに、穴場スポット。
なのにっ!!!!!
それなのにっ!!!!!!!
そこには今のあたしの大注目人物、平津壮太君がいた。
気持ち良さそうに、本を枕に寝ている。
さすがに女の人は隣にいないけど。
それでもなぜだか不思議な、自分でもワケ解んない感情が芽生えて、来なければ良かったって思ってしまう。
諦めて、他の場所にしよう。
180度向きを変え、どこに座ろうか悩みながら足を出した瞬間腕を掴まれて、後ろのソファに倒れ込んでしまった。
「なっ」
驚いて顔を上げる。
そこには寝ぼけ眼の壮太君があたしの腕を離さず握っていた。
こんにゃろう。
他の、いつも隣にいるお姉ちゃん達の誰かと間違えてるな。
そう思ったから「壮太君離して」って、彼を揺さぶった。