“俺様”大家の王国



「え、でも小林君だって仕事があるでしょう?」

「ん? 俺、毎日事務所にしばちゃん連れてってるけど?」
 
って事務所側、それOKなんかい……。


「猫飼わないの? 猫。

良いと思うけどなあ、俺……」

「何でそう猫プッシュなんですか」

「俺、犬も猫も好きだけど、やっぱ同じ部屋に違う種類の生き物がいると、

喧嘩したらどうしよう、とか思うんだよね。

でも、もう家にはしばちゃんいるし。

だから、都合良くちょっとの間だけでいいから、猫もモフモフしたいな……と」


(何かこの人凄い正直だけど、凄い自分勝手だな……)
 
しかも、全然悪びれてない。

何だか違和感を感じる。

「あ、そういや俺、仕事しに来たんだったっけ」
 

そう言うなり、彼はしばちゃんに『お座り』を命じ、靴下を脱いでズボンを捲り上げた。


「し……仕事?」

「そう。風呂掃除」
 
小林君は、お風呂場のドアを開け、専用のスポンジや洗剤を手に、


「水垢なんて怖くない~♪」


と下手くそな歌を歌いながら、掃除を始めた。

しばちゃんは、そんな彼を見守りながら、律儀にお座りを継続している。



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