“俺様”大家の王国
(っていうか、出かけるんだ……)
完全に、部屋に引き籠っているだけではなく。
だけど、言っちゃ悪いけど……十郎さんは何だか少し、
浮世離れしているというか、
社会にちゃんと適合しているのかどうか、怪しい気がする。
そんな彼に、行く場所なんてあるのか、
なんて失礼なことが、急に頭を過った。
「それと、これ。
この前のお詫び。驚かせちゃって悪かったよ」
ドアの隙間から拓海さんが差し出したのは、ケーキの箱だった。
有名店の、銀色のロゴがちらりと目に入る。