Damask Rose [短編集]

泣き顔とアイツ



「うっ…ふ……」


泣かせたかったわけじゃないのに。


数時間前↓


「あれ、柚は?」


用があって俺は放課後直ぐに、隣の教室へ行っていた。


戻った時にはさっきまでいた柚の姿がなくて、だからはせやんにそう聞いた。


「ごめん、俺職員室行ってたから分かんねーや。俺がいた時は柚っちも席に座ってたんだけど」


湯本は部活だから柚とは一緒じゃないよな。


トイレか?それともジュースでも買いに行ったのか?


「柚ちゃんなら、さっき2組の片山君に呼ばれてついて行ったよ」


考えていたら近くの女の子がそう教えてくれた。


「片山?」


知らない名前に困惑する。


「俺知ってる!確か…毎回連れてる女が違って、女関係じゃ噂がすげぇ奴じゃね?」


はせやんが身を乗り出しながらそんな事を言うから、俺の頭の中で警戒音が鳴った。


「告白だったりして」


女の子の言葉がとどめを刺す。


「何で柚なんだよ」


それから直ぐに教室を出て、とりあえず体育館裏、屋上を見て回った。


「どこだよ…」


焦りが高まって、走るスピードも速くなる。


それから使われていない教室を順番に回った。


「何で?」


男の声が聞こえた。


「やめて!」


それから柚の声が聞こえて、直ぐにその教室に入った。


「何やってんだよ」


男が壁に両手をついていて、その間に柚がいた。


「壱也!」


柚が気付いて俺の名前を呼んだ。



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